病院から退院調整の依頼の一環として、家屋評価の立ち合いに呼ばれることがあると思います。
住宅改修や福祉用具の見立てもするため、業者も同行する場合がほとんどかもしれませんが、ただ立ち会うだけでなく、住環境から提案を行えていますか?
福祉用具業者・住宅改修業者が、住環境の専門家であるのはもちろんですが、呼ばれたケアマネージャーが、ただ見ているだけだと、今後の信頼関係にも亀裂が・・・?
できるケアマネージャーになるためにも、見るべき箇所はしっかりチェック。
身体状態や病状にも左右される住環境ですが、一般的なチェックポイントについて見落としの内容に、まとめてみました。
目次(もくじ)
持ち物
- ノート
- 筆記用具
- メジャー
- 福祉用具カタログ
まさか手ぶらで挑むケアマネージャーは、いないと思いますが、決定した工事内容を記載するために紙と筆記用具は持っていきましょう。
ノートでなくとも、バインダーにA4の用紙2~3枚はさんでいくだけでも十分です。
忘れがちなのは、『メジャー』です。もちろん福祉用具事業者や工務店の方は持ってきているはずですが、自分でも持っていた方が、その場で測ることができます。
住宅改修でなく、福祉用具貸与になることもあるので、貸与用のカタログも持参するとスムーズです。
エントランス
道路から玄関に入るまでの動線です。外側の玄関周りですね。
段差
敷地に入り、2~3段の階段を上がって、玄関扉にたどり着く作りになっている住宅は多くあります。段差の高さをしっかりメジャーで高さを図りましょう。
周囲に手すりを付ける際に、どこに付けられるかを確認します。郵便ポストの位置や、塞いでしまって困る部分は無いかなど、日常行う動線の使いやすさを意識して、ベストな位置を考えます。
床材の様子
砂利や飛び石の有無、コンクリートで舗装されているか、土・芝生かなどを見ます。杖や歩行器、車いすを使用する場合、床材は大きく影響します。
砂利や芝を一面コンクリートで舗装してしまうことも、可能ではありますが、かなりの料金がかかってしまうので、他の工事内容との兼ね合いで検討しましょう。
玄関扉
引き戸か開き戸かの確認。玄関扉を交換することは大掛かりな工事になってしまうので、現状の扉を支障なく使える手段を考える方が現実的。
手すりを設置する場合にも、戸を開いた際に不自由ないかも確認ポイントです。
エントランスのチェックポイント
エントランス周りが不完全だと外出意欲・頻度が低下し退院しても閉じこもり生活です。
手すりの設置があるだけで、移動時の安全性は高まります。
単に手すりを勧めるのではなく、手すりを付けることのデメリット(狭くなる・通れなくなる)がある場合にはしっかりと伝えましょう。
外玄関の手すりは、工事の際には費用も高くなります。退院時や一時的の利用になるようであれば、福祉用具貸与の商品にある据え置き型の手すりも、外用の物が増えてきていますので、必要があれば提案してください。
玄関内側
上がり框段差
一般的な住宅で、内玄関がフラットになっていることは極めて稀かと思います。古い住宅だと、30cmを超える段差があることも多いですね。
外出の際に必ず通るこの玄関の段差が、高齢者にとっては大変難しいことです。
長期的にみて、壁に手すりを工事で付けてしまうか、短期的に、返却することを想定し、福祉用具貸与による据え置き手すりかを提案するかを考えましょう。
靴の着脱場
靴を立ったままで、ささっと脱げるのは、しっかりとした筋力のある証。
靴の脱ぎ履き場面を想定し、周囲に座れる椅子をおいたり、壁側で掴まりながら行えるような環境を作る提案があれば良いかと思います。
玄関には、傘立てや子供のおもちゃ、普段使用しない靴、灯油缶など、様々なものが置かれているケースがあります。住環境を見直す際に、スペースの有効活用ができるよう、整理についても助言できたら良いですね。
トイレ
帰った後、必ず使うトイレ。狭い空間ですが、座ったものの立てなくなってしまったり、転倒したり問題が多い箇所です。
和式便器交換
まだまだ和式トイレの家はありますが、便器交換の工事を介護保険を利用すると、それだけで上限超えてしまうことがほとんどです。
福祉用具購入費の補助のもと、据え置き型の補高洋式便座の利用が良いかもしれません。
和式のスペースを補高洋式便座に切り替えると向きが変わるため、目の前が扉となったり、極端に狭くなってしまい余計危険を伴うことがあります。
置いた状況を想定しながらの検討も必要です。
手摺
トイレ内の手すりは、是非本人に座ってもらい、日常の動線を見ながら提案してください。壁のどこに手をついて、中に入っていくのかや、普段の立ち上がりはどの様に行っているのかを見ます。
典型的な手摺を提案するのではなく、日常動作からの延長で使用にベストな手摺の設置位置を考えましょう。
- 手すりを押し上げて立ちたいか
- 手すりに掴まり、引いて立ちたいか
前者の場合は、工事による手すりよりも便器にはめ込む福祉用具貸与の手摺が望ましくなりますね。
ドア
開き戸であり、動作に支障がある場合は、開き戸への交換も一つの案です。
浴室・脱衣場
手摺
浴室内で、一般的に手すりが必要とされる箇所は、
- 洗い場移動
- 洗い場立ち座り
- 浴槽またぎ
- 浴槽立ち座り
といった、動線に延長する箇所です。
もちろん、すべてが必須という訳ではありません。入浴の手段に合わせて、必要箇所に。
こちらも、本人に実際に行っている、洗い場の移動で手を触れる箇所や、浴槽を跨ぐときの向き向きなど、普段の様子を実演してもらいながら、検討しましょう。
床材
浴槽と洗い場の高さが極端に差がある場合は、すのこを敷くのも手ですが、浴槽が浅くなるので、嫌がる方は多くいます。
滑り止めのための、床材全面張替えなどは現実的ではなく、跨ぐときに足を着く位置や、浴槽内の滑り止めマットの提案程度は行えるようにしましょう。
扉
浴室の扉も開き戸が多いですね。開き戸だと、シャワーチェアーを置く際や、介護者と共に入る際に、ドアの動く範囲と干渉し、中での移動が不便になります。
折れ戸への交換の必要性をみましょう。
段差
最近のユニットバスでない限り、一般的なつくりとして、脱衣場から浴室には一段降りる作りになっています。
その段差が10cmであっても、濡れた身体で上がることは危険になることもあります。入り口周りの柱・壁に手すりの取り付けができるかを見ます。
自宅内の動線
手すり
各箇所だけでなく、寝室や居室など普段いる場所から、トイレや浴室、玄関など、生活に必要な動線のなかで必要な改修箇所を確認。
入院前に、2階を使用する生活を行っていた場合は、無理に1階のみの生活に切り替えるのでなく、手すりを設置するなど、必要に応じて手を加え、できていたことを減らさないように改修を行えるようにしましょう。
床・敷居・段差
転倒の原因になるような、毛先の長いカーペットや、床の荷物、敷居などの段差の有無を確認。段差解消として、敷居の撤去や、不要なカーペットなどを撤去を打診するのも一案。
既存のまま利用する場合には、転倒リスクの高い状況であることを伝え、気を付けるよう意識づけを図ります。
まとめ
住宅改修の確認と言うと、トイレ・浴室・玄関が中心に思われがちですが、その家で住むとなった際には、外から入り、外に出る、朝起きてから夜寝るまでの動作。
それぞれについて確認が必要となります。
退院後に、対象者の方が思わぬ失敗にあわないよう、実際に工事をする・しないは別として、
- ここには、こんな危険がある。
- これをすると、こんな失敗をすることが懸念される。
など、先読みした提案や情報提供を事前にしておくと、本人・家族も退院に向けての準備に役立つと思います。