上手く活用することができれば、業務の短縮ができる『軽微な変更』ですが、使い方を間違えると減算・変換のリスクの可能性もあります。どんな場合が該当してくるのか、よく確認したうえで行いましょう。
『軽微な変更』の解釈については、自治体で例示をしてくれるところと、そうでないところに分かれます。
自治体からの例示等が無ければ、国の考え方に従えば良いのですが、それだけでは解釈に悩む場面もあります。
実際、他の市区町村がホームページ等で掲げている解釈を見ると『自身が思っていたものと違う』と思うこともありますね。判断に迷ったら、まずは自治体での解釈が示されているかを確認しておく必要があります。
目次(もくじ)
軽微な変更:項目の注意とポイント
根拠となっているのは『介護保険最新情報vol155』。最新のもので、軽微な変更について触れているものは『介護保険最新情報vol959』になりますね。
- サービス提供の曜日の変更
- サービス提供の回数変更
- 利用者の住所変更
- 事業所の名称変更
- 目標期間の延長
- 福祉用具で同等の用具に変更する際にして、単位数のみが異なる場合
- 目標もサービスも変わらない、単なる事業所変更
- 目標達成するためのサービス内容が変わるだけの場合
- 担当介護支援専門員の変更
上記の9項目が該当します。順番に、どのようなケースが該当になるか見ていきましょう。下記項目の枠線部は介護保険最新情報vol.959から引用しています
サービス提供の曜日の変更
利用者の体調不良や家族の都合など臨時的、一時的なもので、単なる曜日、日付の変更なような場合には「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
原則、一時的な曜日変更に限ります。『その日は受診が入ったので、別の曜日に振り替え』などのパターンですね。
自治体によっては、長期的な期間でも『状況・目標・ニーズ』などが変化ない場合であれば「軽微な変更」に該当すると言う指針をだしているところもあります。
『今後は月曜日に往診が来るので、デイサービスを火曜日に』なんて場合は、一時的ではないですが状況的に該当する場合もあるということですね。
サービス提供の回数変更
同一事業所における、週1回程度のサービス利用回数の増減のような場合には「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
デイサービスなどでよくある、最初は週1回だったけど、行けそうなので週2回したい。なんて良くみかけるやつですね。
原則、該当できるのは最初の1回目の変更だけです。
「週1回を週2回に・・・」を軽微な変更で行ったら、「2回から3回に」増やすときも軽微な変更で済ませると言うのはNG。結果的に、当初のプランから見れば、1回から3回に増えたことになってしまうわけですからね。
段階的に増やし、会議等を省略するために活用するのは危険です。
利用者の住所変更
利用者の住所変更については「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
後半には、『該当する場合があるものと考えられる』と書かれています。住所変更に対して、一概に該当するわけではありません。
同市内において、転居による住所変更などではなく、居住地は変わらずとも住民票上の変更に伴うもの。などが想定されるのだと思います。
※他県他市からの転居の場合、保険者・被保険者番号も変更になるため軽微には該当しません。
引っ越しであれば、新し住環境での再アセスメント・新プランが必要になることが多いと思いますから、軽微な変更とは言えません。
転居しても、全く同じケアプランで変わらない場合であれば「軽微な変更」として扱えますが、使う場面は結構限られてしまいますね。
事業所の名称変更
単なる事業所の名称変更については「軽微な変更」に該当する場合があるものと考える。
運営会社の合併や吸収などにより、事業所名称が変わった際などが該当してくると思います。
『名前は変わりましたが、提供サービスについては、継続してそのまま提供していきます!』なんてケースが介護業界でも良く見かけます。そんな時に使えます。
目標期間の延長
単なる目標設定期間の延長を行う場合については、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考える。
ケアプラン上の目標設定(課題や期間)を変更する必要が無く、単に目標設定期間を延長する場合などです。短期目標期間の延長として、多くのケースで活用できる内容だと思います。
自治体の解釈としてでているものとして、
長期目標 | トイレまで自分の足で歩いて行く。 |
短期目標 | 平面5mの歩行が自信をもって歩ける。 |
こんな目標設定の場合、当初の担当者会議などで段階的なプロセスの共有がされている場合には、期間を見直すとともに、5mを10mに目標の見直しをするのも可と示しているところもあります。
福祉用具で同等の用具に変更する際にして、単位数のみが異なる場合
福祉用具の同一種目における機能の変化を伴わない用具の変更については「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
同等の性能を持つ、歩行器Aを歩行器Bに変更といった際に該当します。
同じ品目にあたる物であっても、『車いす』を『リクライニング車いす』に変更という機能が大きく異なるようなものはNGです。
必要となる機能が大きく変化するのいうのは、利用者のADLに大きな変化が出ているわけですからね。『同等の機能の変更=軽微な変更』といった解釈になります。
原則、手すり等の同じ品目であっても、追加となる場合では『軽微な変更』に該当しません。
- 立ち上がりのため
- 玄関段差のため
- トイレへの移動のため
おそらく目的(使い道)に変化が生じることが考えられるためです。
逆に、利用目的やプラン目標が変わらない場合の追加、『移動の安全のために手すりの貸与を1本入れていたが、もう1本あるとより、安全になるため』などでは『軽微な変更』該当すると示している自治体もあります。
目標もサービスも変わらない、単なる事業所変更
目標もサービスも変わらない単なる事業所変更については、「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
例として挙げるのであれば、
- 普段利用している短期入所事業所が利用できず、急きょ他の短期入所を利用する場合
- 事業所の閉鎖に伴い、事業所が変更となる場合
この辺りになります。制度上、プランが既に進行していれば、途中で事業所が変更になっても担当者会議等はなく、ケアマネは連絡調整だけして「あとは、よろしく!」で済んでしまうということです。
ですが、プランも変わらず、担当者会議として招集しなくとも、新規事業所との調整(同行訪問や情報伝達)でケアマネは動くわけですから、あまり恩恵を感じられない気もします。
新規利用事業所とケアマネのみの訪問での簡易担当者会議のようなものは、結局みなさん開催していますよね?
目標達成するためのサービス内容が変わるだけの場合
第一表の総合的な援助の方針や第二表の生活全般の解決すべき課題、目標サービス種別等が変わらない範囲で、目標を達成するためのサービス内容が変わるだけの場合には「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
デイサービスを外出・活動をニーズとして利用していた方が、通所介護施設として基本的に提供される「個別機能訓練・レクレーション・入浴」などについて追記する場合(サービス内容以外は同様となる)などのケースであれば「軽微な変更」に該当すると思われる。
逆に「清潔保持・衛生管理」などが課題・ニーズとして強く表れた場合に追記するのであれば「軽微な変更」には該当しないと考える。
また、訪問介護で買い物代行として利用していた方が、居室清掃を加える場合などは、必要性(課題・ニーズ)が変わるため、「軽微な変更」には該当しないと考える。
担当介護支援専門員の変更
契約している居宅介護支援事業所における担当介護支援専門員の変更(但し、新しい担当者が利用者はじめ各サービス担当者と面識を有していること。)のような場合には「軽微な変更」に該当する場合があるものと考えられる。
事業所内で担当者を変える場合です。勘違いしていると危険です。居宅介護支援事業所が変更となる場合には、該当しません。
利用者本人に対しては引継ぎ等の訪問をされると思いますが、各サービス担当者と面識を有していることとなると新入職のケアマネージャーなどは、サービス事業所の担当者と会っていないことも想定されますね。
軽微な変更とした際の処理
サービス担当者会議等も開くわけではないので、この理由と軽微な変更により対応したことは経過記録に記載しておく必要があります。
基本的には、
- 変更した箇所を、見え消し(
見え消し)で修正 - 変更した表を、交付
- 『該当する状況の説明、判断の根拠』を経過記録等に記載
しておく形になります。
実地指導などで、つつかれやすい部分なので、経過記録には状況や判断根拠は詳しく残しておくと良いと思います。
利用者からの同意は?
変更した表の余白欄に、日付・署名・捺印を求める自治体と、口頭で伝達しその旨を経過記録に残せばよいという自治体と、自治体ごとに判断が分かれるところです。
どちらにせよ、自治体の解釈を示しているところは良いのですが、「軽微な変更」に触れていないような自治体には直接相談するか、念のため署名を貰っておくことが良いかもしれません。
サービス担当者会議はやってもいい
あえて書くほどのことではありませんが『軽微な変更=開催したらダメ』という訳ではありません。
逆にデイサービス側から、回数が増えると料金が変わり、支払額も増えるため、担当者会議等を開いて欲しいといいう要望などが合った場合や、利用日を1日増やすだけでも、他の利用サービスの調整が必要となるような場合であれば、開催してしまった方が早いことも考えられます。
情報の共有や他サービスとの調整等、必要があれば担当者会議を開催するのも可とされていますが、照会や文書等の連絡で共有できるのであれば、ケアマネさんの負担も減ると思いますよ。
最後に
ケアマネジメント業務を省略できる「軽微な変更」です。適切に使用し、業務負担の軽減に活かすことができると良いのですが、失敗によるリスクも大きいです。
減算+特定取り消し
大きな痛手になるので、注意して行うようにしましょう。