年度も変わりようやく落ち着いてきたので、居宅介護支援運営に関わる報酬改定について整理してみました。
簡潔に言えば、居宅介護支援における大きな変化はありません。ごくわずかの報酬増額と、さらに手間が増えたというだけです。
ただし各サービスにおいて、加算等の変更点が多いことが、利用票を作成業務に大きく影響がでてきます。加算が増えすぎて、すぐにページが埋まってしまう。
わかりやすいケアプランを作れと言われても、今回の改正は利用票が、複雑すぎてわかりにくい。
そんな改正について、概要ざっくりとまとめたものです。
整理が出来次第追記する場合もありますが、詳細は厚生労働省HP『令和3年度介護報酬改定について』をご確認ください。
目次(もくじ)
居宅介護支援:基本報酬の増額
旧 | 新 | |
介護1・2 | 1.057単位 | 1.076単位 |
介護3.4.5 | 1.373単位 | 1.398単位 |
居宅介護支援(Ⅰーⅰ、Ⅱーⅰ)における減算なしの基本報酬です。
微増ですが、上がりましたね。
『在宅介護においてケアマネージャーの役割がとても重要なんです!』などと話題にしていただいているのを、さまざまなメディア等でも目にしますが、その評価がこれだと寂しくなります。
事業所が、ある程度の収入を確保するためには、特定事業所加算の取得が必須になってきますね。
事務の効率化による逓減制の緩和
ICTの活用又は事務職員の配置を行っている事業所においては、逓減制の適応件数を見直す。
今まで39件を超えるプランに対して減算になっていたものが、44件を超えるプランに対して適応されるようになります。
5件分多く持てるようになったという訳です。
介護報酬は上げられないから、『プランをたくさん持って補ってください!』という事なのでしょうか。
逓減制の緩和の要件としては2点挙げられています。
『ICTの導入』か、『事務員の配置』か、どちらかを実施すれば良いようです。
こられを配置ができれば居宅介護支援(Ⅱ)となり44件までOK、そうでなければ居宅介護支援(Ⅰ)となり、従来通りの39件となります。
ITCの活用とは?
業務負担の軽減や効率化に資する情報通信機器として、例が挙げられています。
- 事業者内外や利用者の情報を共有できるチャット機能のアプリを備えたスマホ
- 訪問記録を随時記載できる機能のソフトを組み込んだタブレット
介護ソフトそのものとしては『カイポケ』などが挙がるのではないかと思います。うちの事業所で利用しているソフトですね。
スマホや自宅のパソコンからも、ログインすることができ、訪問記録の入力や、情報の確認、共有がどこからでもできます。
法人全体で利用している場合は共通のソフトを利用するメリットが大きいですが、単体居宅などでは料金も安く使い勝手も良いソフトです。
『タブレット』が無料貸与(1台目)されるのもITC活用には、ありがたいです。
介護ソフト以外では、会社からのスマートフォンの支給やアプリの導入などが対象になると思います。
ガラケーを支給している事務所では、難しいですが、スマホが支給されている場合、ビデオ会議や、同様の訪問記録のも随時行えるので対象になってきます。
カイポケでは、『カイポケモバイル』というスマホ貸与のサービスもあります。
事務職員は何をする?
地域包括支援センターにいた際に、事務職員が配置されていたため、私自身は馴染みがあるポジションですが、今まで配属が無い居宅介護支援事業所では『何をしてもらったら良いの?』と言った感覚なのではないでしょうか。
- 要介護認定調査関連書類関連業務(書類の受領、打ち込み、複写、ファイリング等)
- ケアプラン作成関連業務(関連書類の打ち込み、複写、ファイリング等)
- 給付管理関連業務(関連書類の打ち込み、複写、ファイリング等)
- 利用者や家族との連絡調整に関する業務
- 事業所との連絡調整、書類発想等業務
- 保険者との連絡調整、手続きに関する業務
- 給与計算に関する業務
このあたりの業務がQ&Aに挙げられています。
ケアプラン作成やモニタリング訪問等は、もちろんケアマネージャーの仕事。
ですが、パソコンの打ち込みや、文書・FAXの管理等に割かれてきた時間も多くあるはず。こういった所は削減できます。
- 電話の交換業務
- 書類の作成や文書管理
- FAX・メールの送受信管理
- 保険者への手続き業務
地域包括時代には、この辺りを主に事務職員に担ってもらっていましたが、事務職員の配置がない地域包括にいた頃と比べてはるかに働きやすかったです。
特定事業所加算の見直し
単位数の変更
旧 | 新 | |
特定事業所加算(Ⅰ) | 500単位 | 505単位 |
特定事業所加算(Ⅱ) | 400単位 | 407単位 |
特定事業所加算(Ⅲ) | 300単位 | 309単位 |
こちらも微増。まぁ減るよりは良いのですが・・・。
しかし、同時に行うことが増えました。
必要に応じて多様な主体等が提供する生活支援のサービス(インフォーマルサービスを含む)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していることを新たに求める。
とされています。
要するに、ケアプランに多様なサービス・インフォーマルサービスの利用について盛り込みなさいということ。
これまでも、言われてきたものなので、既に導入しているケアマネージャーさんは多いかもしれませんが、特定取得の要件にもなってしまいました。
注意すべき点としては『検討の結果位置づけなかった場合、当該理由を説明できるようにしておくこと』とされたQ&Aですね。
『説明できるようにしておくこと』ですから、記載の義務はなく、もちろん記載箇所の指定も特に書かれていませんが、支援経過や担当者会議の議事録等で触れておいた方が良いと思います。
多様なサービス・インフォーマルサービスとして例に挙げられているものは
- 市町村保健師等が居宅を訪問して行う指導等の保険サービス
- 老人介護支援センターにおける相談援助及び市町村が一般施策として行う配食サービス、寝具乾燥サービス
- 当該地域の住民による見守り、配食、会食などの自発的な活動によるサービス
- 精神科訪問看護等の医療サービス
- はり師・きゅう師による施術
- 保健師・看護師・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師による機能訓練
自治体の行う『通称:横出しサービス』といったものや、訪問マッサージ、地域の会食会(ふれあい会食)などが対象といったところでしょうか。
また、これらが地域に不足している場合には、関係機関(行政や地域包括?)に働きかけていくことが望ましいとされています。
家族や友人との交流・支援についてプランに落とし込んでいる方も多いと思いますが、例には挙げられていません。これらが対象になるかは、自治体の判断になるかもしれませんね。
特定事業所加算A(新設)
特定事業所加算A | 100単位/月 |
従来の特定事業所加算が算定できなかった小規模の居宅介護支援事業所には、嬉しい加算ですよね。
人員面以外の点では、特定事業所加算(Ⅱ)特定事業所加算(Ⅲ)と同程度の要件となっていますが、
- 24時間の連絡体制確保
- 計画的な研修の実施
- 基礎研修の実習協力体制の確保
- 他法人との共同事例検討会等の実施
などの要件については、他の事業所との「連携でも可」となっています。
質は高く、一生懸命やってるけど、人員面だけが・・・といった事業所向けになりますね。
特定事業所医療介護連携加算
『旧:特定事業所加算Ⅳ』が、『特定事業所医療介護連携加算』に名称が変更されました。
従来、取得要件が厳しく、ごくわずかの事業所しか取ることができなかった加算ですが、今後も残るようです。
- 特定事業所加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲいずれかの取得
- 退院退所加算の算定と、その連携回数35回以上
- ターミナルケアマネジメント加算の算定5回以上
と、上記の様に取得要件においては、以前と変わりありません。
存続したものの、取得の厳しさは相変わらず。算定できる事業所はごくわずかとなりそうです。
予防プランに伴う変更点
基本報酬改定:増額
旧 | 新 |
431単位 | 438単位 |
同様に、微増。
予防プランの委託を促進するような、改正内容ではありませんでしたね。
もともとが少ない分、7単位(70円)の増額です。
委託連携加算:新設
委託連携加算 | 300単位/月(初回に限り) |
予防プランの委託を受ける際の上乗せ報酬として、当初話が挙がった際には、大変期待しましたが、残念!!
結局は委託版の初回加算です。最初の1度しか請求できません。
こちらも予防プランの委託を促進するような改正内容にはなりませんでした。
気になる点とすれば、
『包括は、加算で得た収入も踏まえ、居宅介護支援事業所に委託費を支払うこと』といった趣旨の記載。
委託の場合、プラン代を満額もらえているわけではありませんよね。今回の加算分そのまま上乗せになるかどうかは、委託元の自治体次第といったところでしょうか・・・。
通院時情報連携加算(新設)
通院時情報連携加算 | 50単位/月 |
利用者が良しの新設を受ける際に同席し、医師等に利用者の心身の状況や生活環境の必要な情報提供を行い、医師等から利用者に関する必要な情報提供を受けたうえで、居宅サービス計画(ケアプラン)に記録した場合。
今まで、タダ働きでありながらも、多くのケアマネージャーが行っていた受診同席への加算です。50単位(500円)ですが・・・
ケアマネージャーからの一方的なお願いや、伝達だけでなく、医師等からも利用者に関する必要な情報提供をいただく必要があります。
それを5表:支援経過記録などに記載すれば良いわけです。
ただし、
- 利用者に同席する旨を伝えること
- 医療機関に、診察の遂行に支障がないかを事前に確認すること
この2点が、Q&Aに記載されていますので同席を検討する際には注意が必要です。
サービス利用実績がない場合の居宅介護支援費算定
ガン末期などのケースで、退院調整に向けて動いたものの、利用前に亡くなってしまい、プラン代請求ができずにそのまま終了。といったケースは、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
そんなケースであっても1ヶ月分でありますが、居宅介護支援費(プラン代)請求が行えるようになりました。
条件は、大きく2つ。
- 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した利用者
- 退院等の相談だけでなく、モニタリング・ケアプラン・給付管理表等の作成がされていること
当初予定していた事業所・サービス種類を単位数ゼロで作成した給付管理票と居宅介護支援介護給付費明細を合わせて提出することで請求が行えます。
契約時、提供割合の説明
なんのためにこんなことをやり出したのか、各サービスの利用割合と、同一事業者によって提供されたものの割合を提示し、説明をしなければならなくなりました。
対応方法として例が挙げられています。
まず、重要事項説明書に下記、
第〇条 当事業所のケアプランの訪問介護、通所介護、地域密着通所介護、福祉用具貸与の利用状況は別紙のとおりである。
と記載。
別紙にまとめたものを用意し、説明、交付と合わせて、署名を貰う。作成例としては、署名欄がありませんでしたが、1枚にまとめるために足してみました。
重説内に含める場合には、署名欄は不要かと思います。
作成案
(別紙)
①前6ヶ月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合
・訪問介護 〇%
・通所介護 〇%
・地域密着型通所介護 〇%
・福祉用具貸与 〇%
②前6ヶ月間に作成したケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着型通所介護、福祉用具貸与の各サービスごとの、同一事業者によって提供されたものの割合。
訪問介護 | A事業所〇% | B事業所〇% | C事業所〇% |
通所介護 | F事業所〇% | G事業所〇% | H事業所〇% |
地域密着型通所介護 | L事業所〇% | M事業所〇% | N事業所〇% |
福祉用具貸与 | X事業所〇% | Y事業所〇% | Z事業所〇% |
上記について、説明を受け内容に同意します。
〇年〇月〇日
氏名 印
代理人氏名 印
判定時期は、年2回です。
- 前期(3月1日~8月末日)
- 後期(9月1日から2月末日)
こんなの見せたら『人気があるならこっちにしたい』なんて言われないのか心配。福祉用具事業者なんて、大きく差がないですからね。
説明を行う時期については、『居宅介護支援の提供の開始において示す』とされていますが、令和3年4月以前に契約を結んでいる利用者については、次のケアプラン見直し時の説明で良いようです。
ですが、この4月は、プラン代の変更等で重説を取り直す事業所も多いと思います。
重説に合わせて提示してしまうことで、『次のケアプラン見直し時』まで浮かせておくことなく済ませることができると思います。
また、令和3年4月中の契約であっても、集計・出力に時間を要する場合には、5月以降のモニタリング等に合わせて行うことで差支えないとされています。
通所介護感染症災害3%加算の利用者説明
『通所介護感染症災害3%加算』ざっくり言えば、利用者が5%以上減少している場合、3か月間基本報酬3%が上乗せされる加算です。
コロナ禍において、通所系事業所はこれが対象になります。あくまで、加算を受け取るのは『通所系事業所』なのですが、
通所介護事業所等が利用者又はその家族への説明や同意の取得を行う必要はない。なお、介護支援専門員が居宅サービス計画の原案の内容(サービス内容、サービス単位、金額等)を利用者又はその家族に説明し、同意を得ることは必要である。
介護保険最新情報vol.941
『説明・同意』を行うのは、介護支援専門員となっていますね。
モニタリング時等に利用票を説明する場面で触れていく形になると思います。
その他の変更
会議や多職種連携におけるICTの活用
運営基準や加算の要件における各種会議等の実施について、感染防止や多職種連携促進の観点からテレビ電話等を活用しての実施を認める。
利用者等が参加せず、関係者のみの場合
- 医療・介護関係者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス
- 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン
を参考にすること。
利用者等が参加する場合、
- 上記に加え、利用者等の同意を得たうえで
とされています。
事業所間などの会議や研修においては、ビデオ会議も現実的ですが、利用者等も入れるとなると環境的に準備が大変ですよね。
ケアマネだけが本人宅に行き、パソコンを広げて一緒に会議参加。などであれば可能なのでしょうか。
署名・押印の見直し
利用者等への説明・同意について、電子的な対応を原則認めるとされ、署名・押印を求めないことが可能であることや代替手段を明示するとされています。
実務上の場面では『そうは言っても・・・』となんだかんだ署名・押印が続くと思います。新しく追加された、サービス割合の用紙だって、署名・押印欄を設けているわけですしね。
この部分が積極的に進んでくると、働きやすさは改善すると思うのですが。文化は根強い。
電子的記録による保存
諸記録の保存・交付等について、電磁的な対応を原則認める。
今後、メールでのやり取りが進む第一歩になればと思います。が、上記の署名・押印同様、当面は『紙文化』が根強く残っていくのでしょうね。
運営規定の掲示の柔軟化
事業所内に掲示が必要として、相談室等に掲げてあった、アレです。閲覧可能な形であればファイル等で備えおくことも可能になりました。
管理者要件の経過措置
現在、新たに居宅介護支援事業所を立ち上げる際には、主任ケアマネージャーを管理者に置く必要があります。
但し、既に稼働している事業所で、令和3年3月31日時点で介護支援専門員が管理者を担っている場合、令和9年(2027年)3月31日までの猶予されます。
- 管理者が主任ケアマネージャーになった時点で猶予は終了。(その後は主任のみ)
- 現管理者の、急な退職や死亡等(健康に関わる事象)の場合は、猶予1年延長
この辺がポイントですね。
随時追記予定
主となるものについては、だいたい触れられたと思います。
細かな物については、整理が出来次第追記していきます。