地域包括支援センターに相談に来る高齢者の方からは、
- 一人暮らしは大変。ゆっくり暮らせる施設に入りたい。
- 遠方で1人で暮らす母を施設に入れたい。
- 高齢者虐待なんて、ニュースでも騒がれているけど、うち近所の施設は、どうなの?
施設に関わる相談が、たくさんやってきます。
いざ、施設を考えた時、知らないことが多いはずです。終の棲家の選択を間違えないよう、良い施設の選び方、お金の事も含めてまとめてみました。
目次(もくじ)
施設生活のメリット・デメリット
自らすすんで、施設に入りたい。最後は施設で迎えたい。あまり聞かないものですが、それでも、施設が必要な時がくることはあります。
施設生活のメリット・デメリットを整理してみましょう。
施設生活のメリット
- 本人の、安心・安全が確保される
- 家族の、介護負担が軽減される
ご本人の視点とすれば、施設に入居した以上、自身で無理に頑張ることは減ってきます。
ご高齢の1人暮らし、身体的にも不安定になってきますし、認知症などにより判断力が弱ってくると、詐欺被害の対象にもなりやすいです。身体負担は最低限になり、危険からも守ってもらえる。施設のメリットはこれです。
家族の視点からすれば、今までの介護生活がひと段落し、肩の荷が下りる部分があるでしょう。
ご本人だけでなく、ご家族の負担軽減につながります。
身体的な負担軽減もそうですが、介護を背負って、常に目が離せない緊張感や、やりたいこと、行きたいところなど、介護のためにセーブしていたことに余裕ができます。
施設のデメリット
- お金が掛かる
- 施設のルールに合わせた生活をする必要がある
- 自宅ではない
施設により、入居費用に開きはある物の、安い金額ではありません。金額を理由に入居に至らないケースも多くあります。
また、最近は、個人個人に合わせた対応ができる施設も増えてきていますが、やはり施設は集団生活の場ですから、ルールはあります。自身のこだわりが強い方にとっては、なかなかなじめない場面もあるのではないでしょうか。
ご本人の感じる、一番のデメリットは最後に記載した、『自宅ではない』これかもしれません。
どんなに良い施設であっても、長年暮らした我が家ではありません。生活しにくい作りの古い家屋であっても、勝手知ったる我が家です。
特に、認知症のある方などは、環境の変化で認知症場が悪化するケースもありますね。
費用の内訳
施設は、お金がかかる。と言ったイメージは多いですが、どんな料金形態なのでしょうか?
介護費用 (介護保険の適応により、1~3割の自己負担)この部分にのみ、介護保険は適用されます。掛かった費用の全額が1割負担になるわけではないことが注意です。
- 食費
- 居室費
- 雑費(日用生活品費)
『食費』については、1日1000~1500円程度が相場でしょうか。基本的には3食でてきます。施設のスタイルによっては、朝食は自身で準備する必要があり、昼食・夕食のみなんてところもありますね。
『居室費』については、病院などと同じように個室・多床室とで分かれ、費用にも差が出ます。近年は、入居者のプライバシー配慮から、個室の施設が増えてきており、多床室を持つ施設は減少傾向です。また、サービス付き高齢者専用住宅などは、アパートに入居するように、賃貸契約を結び、家賃として支払う施設もあります。
その他の費用として『雑費』となりますが、トイレットペーパーやティッシュ、浴用洗剤などからオムツ代、理容代、医療費、施設によりかかる品目はさまざま。
雑費や日用生活品費として、月額固定で掛かる施設と、使ったら使った分を支払う施設などとに分かれます。
介護保険は、介護費用の部分のみ適応となる。
※特別養護老人ホームや老人保健施設など一部の介護施設では、所得に応じて食費・居住費について減額される制度があります。
施設の総支払額っていくらになる?
料金については地域差があるため、ここでは関東都心部周辺地域、埼玉・千葉・神奈川の施設について、1割負担者を想定です。
参考程度の、料金の概算だけを載せておきます。それぞれの施設違い・詳細については、こちらにまとめてみました。
【介護知識】老人ホーム・介護施設は種類がたくさん。それぞれの施設の中身説明します。- 特別養護老人ホーム(特養)・・・7万~20万円程度
- 介護保険施設13~15万程度
- グループホーム15~20万
- 介護付き有料老人ホーム13万~30万円
- サービス付き高齢者向け住宅15万~20万
特別養護老人ホーム(特養)等については、所得に応じた減免制度が適応となるため、金銭的には抑えられます。最近はユニット型特養といった高い料金帯の特養も増えてきており、その場合は20万程度
一般的な施設では、15万円~20万が相場と言える範囲ですかね。
簡単に支払える金額ではなく、特に年金収入のみの生活下では、限られた施設選定になってしまうかもしれません。
施設入居を考える前の心構え
- 1人暮らしが大変だから、今すぐに施設に入りたい。
- どこでも良いから、取りあえず施設に預かってほしい。
施設の数も増えてきて、施設の種類によっては早々に入居できる施設も増えてきています。ですが、急いで決めてしまった施設では、入居後の生活が長続きしません。
今の大変な環境から脱出することも施設のメリットですが、大切な事は『入った後の生活を どのように送りたいか』を考えたうえで入居を検討すること。
- 自宅の近所の施設に入り、今の交友関係を継続したい。
- たまには家にも帰りたい。
- 気の合う友達を探し、趣味活動を活発に行っていきたい。
- リハビリや運動は、継続していきたい。
- 発作性の疾患(心臓疾患)があるので、24時間見守りがあると安心。
- ガンの持病もあり、看取りも含めて検討したい。
今はさまざまな、種類の施設が増えています。施設入所の際には、勢いで決めるのではなく、複数の施設の情報を集めて考えてみることも重要。
自身の希望する生活に、合った施設選定をすることが、施設に入った後も安心して生活できる第一歩です。
施設の探し方・見学のポイント
パンフレットには良いこと、綺麗な写真しか写っていません。まず、選ぶ際何を基準に選んだら良いのでしょう?すべてを満たす施設は、なかなか難しく、費用も大きくなります。
この中から優先順位をつけて探していくことがポイントです。
立地
費用面にも大きく関係しますが、都心から離れるほど、相場は安価になる傾向があります。
立地に関しては、金額以外で気にするポイントはこの3点。
- 自宅の近くが良いのか
- 家族や友人が施設に訪ねやすい駅近が良いのか。
- 自身が外出して買い物等がしやすい、お店が近隣にある場所が良いのか。
施設に入ったら食事等は、もちろん出てくるため、買い物はなくても生活に大きく支障はでません。
生活面の支援も受けることができるので、家族・友人とも会わなくても生活は行えます。
ただ、入ったあと、自分の行いたいこと。食べたいもの。それができる環境を残しておくことで、施設に入った後についても、できる限り今までの生活のリズムを崩さずに暮らせます。
身体が動くにかかわらず、上げ膳据え膳に甘え、人にも会わず、何もしないと、認知症発症・悪化のリスクにもつながってしまいますからね。
費用
介護付き有料老人ホームなどは、設備充実と値段が比例する傾向にあります。
あれもこれも優れた施設に入り、入居後に金銭不安や家族の負担が増えるよりも、自身が入居するにあたって、何が必要なサービスなのか考えて選びましょう。
施設にもよりますが、入居金を多く払い、月々の負担が軽くなる施設や、入居金がかからないものの、月々の負担が割高の施設等も変わります。無理のない範囲で選定をしましょう。
3年くらいで、死んじゃうから・・・などと、勝手に自身の寿命を決めてしまうのは危険です。寿命はわかりません。長生きした時に居場所に迷うことになってしまいますよ。
間取り・設備
自宅の物をすべて持ち込めるわけではないですが、持ち込みたい物を想定し、その最低限の物を置くスペースはあるのか確認しておく必要があります。
特に、日当たりを気にする方は多くいますね。その他としては、自室にトイレ、洗面、浴室、中にはキッチンがついている部屋などもあります。
こういったものは、一度資料を取り寄せると詳しく書かれています。これらの情報を整理して、希望するライフスタイルに合わせて選びます。
居室だけでなく、共有スペースには、どんなものがあるのか、家族・友人が来た際に、談話スペースなどが整っているかなど、自身の居室以外の設備にも目を向けてみるとも良いですね。
医療面の充実
対応できる医療の種類は施設によってまちまちです。
- どんな医療ケアに対応できるか
- 提携している医療機関がどんな病院か
- 看護師は、常駐でいるのか
- 看護師は、24時間いるのか
すでに大きな持病を抱えている人は、自身の抱える病気から予測される必要な医療に対応できる施設であるかを考える必要があります。
趣味活動やリハビリの実施状況
施設入所をしたからと言って、居室のベッド上でずっと暮らすと明るい生活は行えません。趣味活動や、イベントの実施状況や、リハビリの有無、リハビリ機器の設置状況などを調べます。数としては、かなり少ない印象ですが、ペットとの同居が可能な施設もあります。
入居後の生活を楽しくなる取り組みをしている施設だと良いですね。
候補が決まれば、1度は見学を
候補の施設が決まったら、自分の目で見に行くことが大切です。
施設によっては、見学のために送迎をしてくれる所もありますので、ご家族も含めて、ぜひ施設を自分の目で見に行ってください。
- 建物の様子(居室・共有スペース)
- 施設設備の様子
- 館内の清掃の状況
- 入所者の顔色
- 施設職員の顔色
- 活気
- 言葉づかい
- マナー
希望する設備が、パンフレットに載っていても、稼働状況などは直接確認しておくと安心。
清掃の行き届き具合や、スタッフ・入居者の顔色は、実際に足を運ばないとみることはできません。パンフレット上の表情は皆、満面の笑顔ですからね。
施設探しに迷っらプロに相談
最近は、いくつもの施設紹介会社が乱立しています。
担当のケアマネージャーに相談しても、地域包括支援センターに相談しても、最も施設の情報を持っているのは紹介会社です。
紹介会社は、入所契約を取るため、たくさんの情報を集めます。
ですが、紹介会社の多くは、入居してもらった際に、施設からお金を受け取るので、基本的に本人・家族からはいただきません。ご本人・家族側は、無料で紹介会社に依頼し活用することができます。
すぐに退去してしまいますと、紹介会社のマイナス評価、報酬も貰えなくなるわけですから、長く入居できるような、ご本人にあった施設を見つけてくれます。
複数の施設のパンフレットを集めてくれたり、紹介業者によっては、車での見学送迎をしてくれるところもあるなど、これらは無料です。
ただし、紹介会社にも、善し悪しはあるので『どの紹介会社が良いのか』これをケアマネージャーや地域包括支援センターに聞いてみることが良いでしょう。
施設情報検索サイトも活用
本格的には考えていないけど、近隣施設の情報は見てみたい。
そんな時には、施設情報検索サイトでまとめて取り寄せることも可能です。
- 住所地
- 費用
- 施設の種別
- こだわりポイント
こういった部分を選択していくだけで、希望範囲の施設をリストアップしてくれます。
その中から、興味のある施設を選び、資料請求を依頼するだけ。
まずは届いた資料・パンフレットの中から、どのような施設であるかを確認したうえで、見学をしてみるかを検討することができますね。
施設を探すには、圧倒的な情報量の中から検索が必要。その中でもおすすめは、
対象地域は全国。ここでは、32000の介護施設から探すことができます
この数字は、業界最大級。SONPOケアやベネッセなど大手の施設との提携はもちろん、地域に根付いた小規模な施設情報にも対応しています
今すぐ、施設に入るわけでないにせよ、自宅の周囲にどのような施設があるのかを調べておくことは大切
施設探しについて まとめ
漠然と施設に入りたい!という希望だけでは、良い施設は見つかりません。
- 検討している費用の範囲
- どの地域で探しているか
- 入居後には、どんな生活を送りたいのか
一度こういった情報を整理してみる必要があります。
そもそもどんな施設が近くにあり、どんなことが実際できるのかを知らないと見当もできませんよね。
まずは、パンフレットを取り寄せて近隣施設ついて調べてみることが大切。
入居後の生活を満足して暮らせるために、施設を探す心構えとして『入った後に、どのような暮らしをしたいのか』これをご本人・ご家族の中で明確にすることが、良い施設を探す一番のポイントです。