以前の記事で紹介した、認知症の症状・対応を示す寸劇として、よく使われる
『ごはんまだ?』の寸劇。
それだけでなく、定番ネタをもう一つ。
今回は、こちらも同様に使われることの多い
『そろそろ家に帰ります』の寸劇です。
認知症症状からくる、帰宅願望をテーマにした内容です。
寸劇シナリオ(悪い例)
ナレーション:●●さん(おばあさん)、3年前ご主人が亡くなったことを機に、長男の●●さんの家に移りました。●●さん(長男)が仕事にいる間は、主にお嫁さんの●●さんと2人で楽しく過ごしていましたが、最近認知症の進行により、喧嘩が絶えなくなっています。
おばあさん:
ご馳走様。今日のご飯も、とっても美味しかったわ。
お嫁さん:
お粗末様でした。今、お茶入れますね
おばあさん:
(お茶を飲み一休みして、リュックに荷造りを始める。)
さてと、●●さん(お嫁さん役の名前)そろそろ息子が帰ってくる時間だ。私は家に帰りますね。
お嫁さん:
え!? おばあちゃん何言ってるんですか。ここがおばあちゃんの家ですよ。
おばあさん:
子供が学校から帰ってくるんだよ。ご飯の準備もしないといけないんだ!帰しておくれよ。
お嫁さん:
○○(夫の名前)は、仕事に行ってます!ご飯の準備も私がするんですから!おかしなことを言わないでください!
おばあさん:
なんてこと言うんだい!帰るったら帰るよ!
お嫁さん:
だったら、勝手にどこでも行ってください!
ナレーション:そうして、この後おばあさんは離れた町で警察に保護されて、3日後自宅に帰ってきました。おばあさん、周りから見たら明らかに「おかしなこと」を言ってるのに、何度正しいことを伝えても、納得してもらえませんでした。最後には喧嘩になってしまい、この結果です。お嫁さんは、どのように接することが良かったのでしょうか?
などと、締めます。
寸劇シナリオ(正しい対応)
おばあさん:
ご馳走様でした。こんなにおいしいご飯は久しぶりに食べたよ。
お嫁さん:
お粗末様でした。今、お茶入れますね
おばあさん:
(お茶を飲み一休みして、リュックに荷造りを始める。)
さてと、●●さん(お嫁さん役の名前)そろそろ息子が帰ってくる時間だ。私は家に帰りますね。
お嫁さん:
あらあら、それは大変。暗くなりますから一緒に行きますね。
おばあさん:
悪いわね。助かるわ。
2人で:(周囲を、一回り散歩する)
お嫁さん:
さあ、おばあちゃん家につきましたよ。
おばあさん:
沢山歩いて疲れたね。ちょっと一休みするよ。
お嫁さん:
お散歩したら、気が紛れたよね。良かったわ
ナレーション:外を歩いたことで、気が紛れたのか、おばあさんが言い出した「おかしなこと」も収まったようです。最初の対応の様に、怒ったり・否定したりしても、おばあさんは真実だと思って話しています。おばあさんの声に寄り添える対応を心がけると、上手くいくかもしれません。
寸劇の準備(小道具)
- エプロン(お嫁さん用)
- 杖(おばあさん・おじいさん用)
- 白髪カツラ(必要であれば)
- リュックやカバン(帰り支度用)
- 茶碗や箸、お盆(食事用)
- 湯呑み、急須
テーマごとに小道具を用意すると、複数の寸劇を行う時に荷物になりますし、保管にも困ります。
どの寸劇でも使いまわしができる様に、基本的な用具のみに抑えた方が無難です。
寸劇実施のポイント
正しい例を実践してもらうことが目的ではありません。
- 怒ること
- 否定すること
- 話を聞くことを、投げ出すこと
この3点の心構えを伝えることです。
正しい例のあと、この3点の心構えを伝えましょう。悪い例の劇の際にも、この3点が目立つように演出します。
また、ナレーションの補足内容についても、劇だけでは伝えきらない背景などの開設をしっかりと伝え、印象とのこる劇を組み立てましょう。
- 家族構成
- 本人への家族の思い
- 認知症の症状
- 今の生活状況や背景
最後に
寸劇は、準備や練習に時間を要し、人でも掛かります。
開催のたびに、練習・準備をするのではなく、認知症サポーター養成講座などの定期開催として実施する場合には、その都度考えるのでなく、自身たちの固定のシナリオを組み立て、いつでも実施できるようにしておくと、負担が軽減されると思います。
小道具についても、『寸劇用』とまとめて段ボールにでも入れ、保管できたら良いと思います。