地域包括支援センターには、1時間程度の開催時間で介護保険制度を説明して欲しいなんていう講座の開催依頼がよく訪れます。
どの地域包括でも、自治会や民生委員などから受けたことがあるのではないでしょうか?
高齢者の相談窓口として機能する地域包括支援センターが、最も利用する機会の多いこの制度ですが、日常的に使っていても、制度の中身を十分に理解していないまま業務にあたっている職員も見かけます。
この介護保険制度、対象者が高齢者であるにも関わらず、実際利用する高齢者の方にはもちろん、一般の方にとっても複雑でわかりにくい制度です。
地域の向け講座では、制度をただ説明するだけでなく、分かりやすくように要点を絞った説明をしなければなりませんね。
講座を開催する上での注意
講座を受ける参加者の多くは『今すぐ、制度を利用したい!』
と言う方ではなく、
『困った時に素早く使えるように、どんなものかをざっくりと知っておきたい。』
という、希望で講座を依頼してきているはず。
介護保険制度を詳しく伝えようとすると、かなりの長時間研修になってしまうだけでなく、この地域側が求めるニーズとズレてしまうので注意が必要です。
地域が求めているものは、制度の概要。
複雑になっている中身を知るべきなのは、ケアマネージャー等それを生業とする職種の方々です。
地域を対象に実施する際には、広く浅く全体を触れながら、興味がある部分(後々使うことを想定した部分)に焦点を当てて、ざっくりとした制度説明を行うことが良いと思います。
介護保険制度に関する講座の組み立て方
講座の組み立て方として『3つの柱』に分けて構成すると分かりやすいと思います。ここでは構成について記しているので制度の詳細は、【介護保険制度について】の記事を参考にしてください。
1.認定が必要であることと、申請方法
制度の特徴として、利用するためには、申請をして、認定を受けることが必要ということ。
そのため、
- 認定までの手順。
- 何が必要で、結果までのどのくらいの期間を要するのか。
- どの程度の状態が、申請に該当するのか目安を説明。
加えて、最近の法改正で、総合事業開始に伴い、チェックリストとして簡略化された申請=事業対象者もある旨を伝えましょう。
制度を利用するための、前提条件となる手続きについて説明します。
参加者の多くは、介護保険料を払ってさえいれば、すぐに介護サービスを受けられると思っている方が多くいますので、その誤解を解いておく必要があります。
2.利用できる介護サービス内容
次は、実際に認定を受けることができた場合、どんな介護サービスがあるのかを説明します。
自治体などが発行する介護保険パンフレットなどを使って説明する際、記載されているサービスを、順番に読み上げる職員さんが多くいます。・・・これダメです!
特に、要支援を担当する地域包括の職員さんは実感しているかもしれませんが、ほとんど使わないサービスがありますよね?
地域向け講座では、使う頻度が極端に少ないサービス内容まで細かに説明する必要はありません。
ここでは、『3つの種類』に分けて説明します。
- 自宅に来てもらうサービス(訪問系)
- 施設に通う(通所系)
- 住環境の環境整備(住宅改修・福祉用具)
大きく分け、こんな形にすることがシンプルでわかりやすいと思います。
詳細には触れません、大きく分けて3種あることに触れ、それぞれの概要を説明します。『訪問系には、こんなサービスがありますよ』と例を挙げる程度で十分かと思います。
3.サービス利用による料金負担額
利用できるサービス内容についてもですが、それを利用する側としては、料金も気になるところですよね。
おそらく、過去に家族の介護を経験した方でもなければ、大体いくら位といったイメージも浮かばない方が多くいるはずです。
この金額も、細かく分かれている料金体系ですので、大体の金額を伝える程度で良いと思います。ただし『負担割合が所得に応じて変わる』ということには、触れておきましょう。
仮に、例として挙げた金額でも、現在は3割負担という場合もありますよね。伝えた金額と大きく差が出てしまいます。
例として挙げるのであれば、
- 週1回のペースでデイサービスに通ったら、いくら?(概算)
- 週2回ヘルパー利用をし、週1回デイサービスに通ったら、いくら?
- 福祉用具のレンタルや住宅改修の料金は、どんな仕組み?
利用できるサービス内容を伝え、その料金負担も伝えた後には、さらに簡単な事例を交えながら、説明していくと興味をもってもらえます。
このようなケースで、こういった組み合わせでは、〇〇円ぐらいかかりますよ。
と言った、保険の営業屋さんが行っているような利用料金プランの提示をする感覚で伝えていくと、イメージが浮かびやすいと思います。
例)【独居・足腰の悪いおばあちゃんが、サービスを使って安全に生活するには】
- 要支援1程度想定
- 週1回 デイサービスに行き、運動と外出
- 週2回 ヘルパーさんが来て、掃除
- 自宅内は玄関の手すり貸与
- 近所の商店までの買い物用に、歩行器貸与
- 配食サービスの利用で安否確認
介護保険制度以外の、福祉サービスの導入を織り交ぜながら、お1人暮らしも安心です。のイメージ作りなんかをします。
実際に事例を複数挙げた方が、参加者が、自身を想定したイメージが広がり、こんな時に利用するものなのか!と言った利用目安につながります。
極端に元気な方が利用する事例を挙げてしまうと、『どんどん制度を利用しよう!』と言った、認識をさせてしまうので、本当に必要になった時に、利用するための制度を印象付ける事例にしましょう。
まとめ
講座の締めとしては、こんな制度を利用する必要になった時には、『地域包括支援センターへ相談ください。』と、周知活動に繋げましょう。
地域向け開催の場合、今すぐサービス必要としている人は少ないです。
- どんな状態になったら、制度に頼るべきか
- 頼ったらどんなサービスがどんな料金で利用できるのか
- 手続き含めて、それをどこに相談したら良いのか。
この辺をわかりやすく伝えることで、必要な時に、必要なサービスへすぐに繋がる住みやすい地域づくりの第一歩です!