平成30年4月から、居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から所在地市町村へ移譲されました。
そうは言っても、必要な内容ついては変化ありません。
前提となることは法人格を持つこと。その他に、人員・設備・運営基準等が定められています。
開設を考える前に、自身が当てはまっているのかを確認したうえで、準備を進めていきましょう。
居宅介護支援事業所開設の前提条件
法人格
開設の要件として、法人であること。ゼロからのスタートの場合、まず法人格を取るところから始まりますね。
法人作成には、時間と費用を要します。
居宅介護支援事業所の設立を考えるうえで、まずこの法人をどの形にするかから考える必要があります。
人員
一度、開設における管理者は主任介護支援専門員に限るとなりましたが、現在は猶予措置が取られ、一般の介護支援専門員でも開設できるようになっています。
それでも『介護支援専門員』の資格を有していることが開設の要件。
会社の社長が介護支援専門員を持っていなくとも大丈夫。既に会社を運営していて、事業の一つとしてで居宅を始める場合、雇用した介護支援専門員に管理者を務めてもらう必要があります。
申請時に必要な物たち
申請書をはじめ指定申請に必要な書類一式は、自治体ホームページ上からのダウンロードであったり、市町村担当課から貰うことができます。
ここでは私の事業所が申請の際にいただき、提出したもの例にをまとめています。
申請した市の担当課からメールで送られてきたフォルダの中には
- 申請に必要な書類の一覧
- 指定様式の書類データ
- このような感じで作ってくれと参考様式としてのデータ
これらが入っています。必要書類として挙げてあっても、指定様式も参考様式決められていないものも複数あり、それらは自身で作成する必要があります。
各市町村で提出物や記載内容に若干の違いがあるので直接の確認は必須。
指定申請書および付表
【市からの指定様式:あり】
申請書です。おそらくどの自治体も申請用紙は用意してくれるはずです。
介護保険法第79条第2項各号の規定に該当しない旨の誓約書(欠格事由に該当していない旨の誓約書)
【市からの参考様式:あり】
過去五年間の間に介護保険法等に関して処分を受けたものがいないことを示す誓約書です。
誓約書は、出来上がっているため記名押印をするだけで済みました。
登記事項証明書または履歴事項全部証明書
【原本そのままなので指定等なし】
法務局等で取り寄せた原本(3か月以内の物)を用意します。
定款に作成した事業内容の部分に『介護保険法に基づく居宅介護支援事業』といった、介護事業を行う会社であることが必要。
別の事業を行っていた会社が、介護事業に参入する場合、定款の修正が必要になりますね。
賃貸契約書(土地・建物が賃貸の場合)
【原本のコピーのため指定等なし】
アパートを借りて事務所を構える際には、必須ですね。契約書は1冊全部コピーする必要はありません。
その物件をあなの法人が借りていることがわかる程度の部分で大丈夫でした。
コピーしたものには、『法人の原本証明』が必要になります。
コピーしたものの裏面や余白に
『この写しは原本と相違ないことを証明します。●年●月●日、株式会社●●代表取締役●●』を記載。
最期に『代表印』を押し完成です。
原本証明は、コピーを提出するその他の書類でも必要になりますので書き方は覚えておいてください。
法人所有の場合は、所有がわかる書類が別途必要になります。
平面図
【オリジナル作成:指定等なし】
事業所内の平面図を作成します。私はエクセルで図形を組み合わせて作りました。
必要な部屋としては、事務室、担当者会議を行う部屋、相談室の3部屋ですが、担当者会議を行うスペースと相談室は兼用でも問題ないので、2部屋確保されている間取りであれば大丈夫です。
事務所の間取りだけでなく、必要な設備(机・イス・書庫・パソコン等)を置く位置を記載。
合わせて提出する写真を撮影した方向に矢印で記入します。
※例には載っていませんが、写真に合わせて番号を振っています。
写真
【指定様式等なし】
実際に必要設備が準備されているかどうかの写真。A4サイズの用紙に2枚ずつ写るように印刷して提出しています。
こんな感じで部屋の雰囲気が分かれば大丈夫です。
建物外観、玄関、事務室、サービス担当者会議の場所、相談室、備品(パソコン、電話機、書庫など)を撮影します。
必ず写す必要がある項目等指示があると思います。抜けが無いように注意してください。
従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
【市からの指定様式:あり】
事業開始初月の勤務表のようなものを作成します。休みの日には『休』、勤務日については時間帯に分けてA勤・B勤・C勤などと記載します。
居宅介護支援事業所の場合シフト勤務などはなく一律でしょう。
『A』を勤務日に埋めていき、余白に『A=8:30~17:30』などと記載しておくだけで問題ないと思います。
雇用関係を証する書類(全職員分)
【市からの指定様式:暴力団に関するものだけ、あり】
- 労働条件通知書
- 秘密保持に関する誓約書
- 暴力団等でないことがわかる誓約書
自身のほかに従業員を雇う際には、この3点を作成します。
書式の指定が無かったので、私の事業所では労働条件通知書に秘密保持に関する文言を入れ込んだので、2点を提出するだけで済みました。
当該事業所に勤務する介護支援専門員一覧
【市からの指定様式:あり】
介護支援専門員として所属する方々を記載した名簿のようなもの。ケアマネ番号と、常勤・非常勤や専従・兼務などを記載する欄があります。
就業規則
【市からの指定様式:なし】
10名以上の労働者を雇う際には、労働基準監督署に届出が必要となるため、作成すると思いますが、小規模な事業所では作成していないこともあるかと思います。
指定申請の際には、提出が必要となるので雇い入れの人数問わず、作成してください。
資格証明書
【原本のコピーのため指定様式等なし】
所属する介護支援専門員のケアマネ証のコピーを準備します。
こちらも余白や裏面などに、『法人の原本証明』の記載が必要となります。
運営規定
【市からの指定様式:なし】
指定様式はありませんが、ゼロから作るとなると大変です。自身の所属する事業所の運営規定等を参考に作成してください。
苦情を処理するための措置
【市からの参考様式:あり】
苦情担当者(おそらく管理者や法人代表)とその連絡先。苦情を受けた際の対応手順や対応方針を記していきます。
関係市区町村並びに他の保健医療サービス及び福祉サービスの提供主体との連携内容
【市からの指定様式:なし】
自治体、他の介護サービス事業関係機関、医療機関などとどのようにお付き合いをしていきますか?と言った内容を記載するもの指定書式が無かったのでオリジナルで作成しましたが項目としては大きく4点
- 行政(包括含)との連携
- 他の居宅介護支援事業所との連携
- 介護サービス事業所との連携
- 医療機関との連携
こんな項目で見出しを付けて、それぞれに対してどのように連携していく必要があるかをまとめたものを作成しました。
居宅介護支援費算定に関わる体制等に関する届け出
【市からの指定様式:あり】
開設時に算定する必要がある加算等関する届け出ですが、何もなくとも『なし』にすべてチェックを付けて提出。算定する加算があるようであれば、それに付随する添付書類が必要になるかと思います。
関係法令を遵守する旨の誓約書
【市からの参考様式:あり】
こちらも誓約書は出来上がっていましたので、記名押印のみで済んでいます。
契約書・重要事項説明書
【市からの参考様式:なし】
参考様式はありませんが、自身の所属する居宅介護支援事業所等のものを参考に作成した方が良いでしょう。
契約書と重要事項説明書がそれぞれ別々になっていても問題ありませんし、一冊にまとめられているものでも大丈夫です。
個人情報の同意に関するものや、医療機関へのケアマネ情報のやり取りについてなど、最近の法令で追加され、載せる必要があるものについては抜けが無いように作成してください。
自治体の連絡先などを記載する際に、古い物を参考にすると担当課の名称が変わっていたりするので注意が必要です。
申請の時期とタイミング
締め切りは、およそ事業開始予定日の2か月前と言われています。
私は4月1日開設で進めていき、1月前半に必要書類のデータをメールで送ってもらい、1月末に提出。
市役所からは、締め切りは2月初旬頃までにと言われ、厳密な締め日はありませんでした。
おそくとも3か月前には、市町村担当課に連絡をし、申請手順を確認し2か月前の締め切りに間に合うように準備を進める必要があります。
事前に、電話やメールのやり取りでなく、書類提出前に面談等を行う自治体もあるので余裕を持った行動ができると良いですね。
もちろんアパートの契約や備品の準備は同時期に始めると間に合いません。申請の際には全て揃っていることが必要となりますので、より早めに行動しましょう。
また、申請時には実際の居宅の管理者との同席が必要です。私の事業所は、別に居宅の管理者を設けているので、2名で申請に行きました。そのような際にはその方との日程調整も必要になりますね。
まとめ
指定申請の手順は、細かなところは自治体により異なり、作成するもの・集めるものの種類が大変多いです。
なるべく早めに担当課に開設の意志があることを伝えて、必要書類の一覧及び様式を揃えてください。
合わせて、特に開設日に合わせた申請期限に注意が必要です。これを過ぎてしまうと、予定した開設付きにオープンを迎えることができません。
開設前にも面倒なことは多くありますが、まだ事業所運営はスタートもしていない段階。
スムーズなスタートが切れるよう頑張っていきましょう。