認知症サポーター養成講座や、そのフォローアップ講座、スキルアップ講座などが開催される中で、
通常のものに加えて、グループワークやロールプレイを取り入れ、実際に認知症の方と接する際の対応場面への体験機会を講座に組み入れて開催されるケースが増えてきていますね。
参加者が楽しめる(?)ロールプレイ演習について、テーマ選定・その狙い・ぷち寸劇も交えた進行方法などについてまとめました。
目次(もくじ)
認知症演習 ロールプレイ 進行手順
時間としては、1テーマ20~30分程度でしょうか。私の地域包括支援センターで実施した際には、1度に2テーマ実施し計45分予定で組んでいます。
事例の背景説明 5分
寸劇を始める前に、認知症役、支援者役のそれぞれの背景を伝えます。
この後説明しますが、寸劇は、ワンカットの短いものです。
事前に、事例の中の主人公(本人・家族)の情報として、
- 認知症の程度
- 日常の困りごと
- 認知症になる前の暮らし
などを伝え、
支援者(友人・発見者役)側の情報としても、
- その方との関係性
- 認知症対応経験
こういったことに、事例解説として事前に伝えておくことで、短い寸劇でも、状況が伝わりやすくなります。
寸劇の実施 5分程度
長い寸劇を行うと、どこが劇のポイントなのか伝わりにくくなってしまいます。
寸劇の役者に慣れている職員も少ないでしょうから、事前の背景説明で概要をアナウンスし、実際の寸劇は、トラブルの場面だけを切り取って行うとシンプルに出来上がります。
最初は、一般的に言う『悪い例』の実演を行います。そして寸劇の後、劇の中での悪い点を解説していきます。
ここで、数名指名し答えてもらっても良いかもしれませんが、地域向け対象(一般の方)に行うことが多いので、私は指名したりはしません。
- こんな対応がいけなかった。
- こんな言い方はいけない。
など悪い点を挙げますが、正しい対応はここでは伝えません。自分なりの正しい対応方法を考えてもらい、それを演習で一度実践してもらいます。
ロールプレイ演習 5分~10分
寸劇の場面を2人一組になってもらい、再現してもらいます。
対応方法については、まずは自身で考えた言い方で伝えてもらい、ある程度、行えた時点で、一度動きを止め、改善点を伝えます。
自身で行った対応が正しかったのか、振り返りながら、再度ロールプレイを実施してもらいます。
最後に、地域包括スタッフより正しい対応例での寸劇
時間がない場合は、この寸劇は省略することがありますが、参考までに、紹介する程度で行います。
以上が、ロールプレイ進行の流れです。
それでは、実際のテーマとその詳細についてです。
演習例①:徘徊中の高齢者への声掛け
背景説明
ここのところ、認知症が進行し、近所で徘徊が有名なAさん。
以前は、自治会長をされていて、認知症になる前は、小学生の登下校の見守り活動にも熱心だったため、地域で頼りになるおじいちゃんでした。今でも、家族が目を離すと見守り活動に参加するつもりで家を出て行ってしまいます。出て行ってしまうと、なかなか自宅を見つけられなくなってしまいます。
Bさんは、Aさんの2軒隣に住んでおり、ご家族からは、遠くへ行って行方不明になる前に、見かけたら連れて帰るか、連絡を欲しいと頼まれていました。
そんな中、Bさんは、徘徊中のAさんを初めて見かけました。
(ここまでナレーション担当が語ってから、寸劇に入ります)
寸劇シナリオ
【Aさん】ウロウロ・キョロキョロ 迷う
【Bさん】Aさん~(後ろから呼ぶ) Aさんの家、あっち(反対を指さす)ですよ。
【Aさん】 誰だおまえは!
【Bさん】何言ってるんですか、●●ですよ。 ほらほら、 案内するから行きましょう(腕つかむ・・・)
【Aさん】暴れる・騒ぐ 「さらわれる~、助けてくれ~、誰か~」
【Bさん】えぇ…(困る) せっかく、連れて行こうと思ったのに。関わるのやめとこ…(逃げるように去る)
悪かった点について
・後ろから声を掛けてびっくり。
【正面に立ち、顔を認識してもらったうえで、ゆっくりと話しかけることが望ましい。】
・自己紹介が後回し。
【Bさんは、昔からよく知っている人でも、Aさんは忘れてしまい初対面の認識。】
【名前だけでなく、隣の○○や、民生委員の●●など、わかりやすい表現で行う。】
・無理強いし、腕をつかんで動かそうとしている点
【知らない人に腕なんてつかまれたら恐怖。】
・そのままにして、逃げてしまった。
【自身で対応しきれない場合、家族や警察等に連絡・通報。】
ここでは、対応として悪い点を伝え、【カッコ】内の説明は省き、まずは自身で考えてもらい演習に移ります。
ロールプレイ実施
机の右側がAさん役、左側が、Bさん役など配役をあらかじめ決めておくことと、参加者が奇数の際には、職員が入ることをスタッフ内で確認しておくとスムーズに行うことができます。
参加者自らが考えた正しい方法で、実施してもらった後、職員から正しい例を口頭で伝えます。
・正面から、ゆっくり優しく
・まず、名乗る。
・名前だけでなく、【隣の○○です。同じ町会の○○。すぐそこの家の○○】などの自己紹介をする
・家の場所、迷子になってること、認めなくても 否定はしない。
・無理強いしない。
・真夏の炎天下など、まずは日陰等に避難することも視野に。
・警察や、地域包括への連絡通報。
正しい方法などを伝えたら、再度ロールプレイ実施。
時間によっては、A・B配役を入れ替えるなど臨機応変に。正しい例の寸劇を行う前に、実際に参加者に正解モデルとして、行ってもらうなども良し。
正しい対応例の寸劇
寸劇後、振り返りとして、悪い点・正しい対応例を復習し終了。
ロールプレイを2パターン行う際には、最後にまとめての復習でも良いと思います。
場面② 同居する義母が自宅に帰ると外へ・・・
背景説明
Aさんは、長男(Cさん)と嫁(Bさん)、2人の孫と 5人で暮らしています。
1年ほど前から、認知症の診断を受け、徐々にトラブルも増えてきました。
物忘れは多く、食べた事も忘れる。 財布も良く失くす。
物忘れや、数々の失敗にようやく家族も慣れたときに、新しく出てきた初めてのトラブルが起こりました。
寸劇
【Aさん】Bさん そろそろ家に帰りますね。
【Bさん】何言ってるんですか、ここがお義母さんの家ですよ。
【Aさん】息子のCが、学校から帰ってくるんだよ。ご飯を作らないといけないのさ
【Bさん】Cは、もう50歳でしょ。はいはい(飽きれ口調)私もご飯作るので、外なんて出ないでくださいよ。(鍵を閉める様子)
【Aさん】どうしよう・・・困ったな。帰しておくれよ~・・・ Bさ~ん・・・(グルグル・そわそわ歩き回る)
【Bさん】あ゛~ もう、うるさいな! どこへでも行っちゃえ~!(怒鳴る)
悪かった点について
・認知症と思って、話を聞いてあげない。
【あきらかにおかしな話でも、取りあえずはゆっくりと聞く。=傾聴】
・否定。 怒る。
【おかしな話も、認知症の方自身は、事実と思って話してる】
・解決しないまま、放置。
【一応の、解決をしないと、長く不安を引きずる。】
正しい対応例
・おかしなことであっても、話は聞いてあげる。
・否定もしない。
・解決ができない状況の際には、意識・興味を 逸らす。
例)一度外に出て、一緒に散歩などをして帰る。話題を変える。(夕飯何が食べたいですか? 手伝ってもらえませんか?など)
まとめ
あくまで、場面を想定した寸劇・対応例です。
正しい対応例を行ったからといって、解決しないケースもあります。
この言い回しが良い!この文句が効果的!ではなく、このような、心構えで接していくことが大事。ということを意識して伝えていただけたらと思います。
10人の認知症の方が、いたら、10通りの正解例があるはずですから。
加えて、劇に熱心になり、笑いや涙を取ろうと、複雑な構成にすると、何が悪い部分で、どこを直したら良いのかが分かりにくくなってしまいますし、それを見本に行うロールプレイが難しくなってしまいます。
今回の事例のような、3往復程度のやりとりで終わる程度のものが、ロールプレイには行いやすいやり取りだと思います。