温かいお湯に浸かって、一日の疲れを癒す。
リラックスのひと時ですが、高齢者にとっては、大きな事故につながりやすい入浴行為。
高齢化の影響で、10年前と比べて65歳以上の高齢者において、浴槽内の事故で死亡した人数は1.5倍に増えています。
加えて11月~4月は、ヒートショックに気を付けていかなければいけない期間ですね。
入浴の際の危険は、1年を通して続きますが、特に冬の時期の介護予防教室などでは、ヒートショックについても触れ、事故防止に繋げていきましょう。
- 入浴のメリットとデメリット
- 高齢者に多い入浴事故
- 正しい入浴方法
- 入浴事故を減らす環境整備
目次(もくじ)
入浴のメリット・デメリット
入浴は、温まる・リラックスするだけでなく、身体にも良いメリットがたくさんあります。
ですが高齢者にとっては、デメリットに繋がることもあるので注意です。
- 65歳以上
- お酒を飲む方
- 熱い風呂を好む方
- 高血圧や糖尿病の持病がある方
- 不整脈がある方
入浴のメリット
心理的なリラックス効果や、単に清潔保持のためだけではありません。
血管が拡張され、血液循環が促進されるので、疲労回復。
循環が良くなるので、浮腫み(むくみ)の改善にもつながります。
温めることで、慢性的な痛みに対しては鎮痛効果もあり、筋肉の負担軽減から、関節が動きやすくなります。
身体を温める事や、お湯の浮力により、身体的な効果もありますね。
一度温まった体は、体温が下がる際に、眠気を誘発するため、安眠効果もあります。
入浴のデメリット
上記のメリットだけではなく、同じことがデメリットに作用する場合もあります。
温まることや水圧による、心臓への負担。肺への負担。汗をかくと、血液の粘度が増し、脳梗塞・心筋梗塞を誘発しやすくなります。
滑りやすい場であるための転倒や、浴槽内での溺水。
これらのデメリットが高齢者の入浴事故に繋がっていきます。
高齢者に多い入浴事故について
入浴事故で救急搬送される人の9割は高齢者
- 溺水
- 転倒
- ヒートショック
溺水は、溺死に至る危険な事故であり65歳以上から溺死者が急激に増加します。
転倒も、骨が折れやすい高齢者にとっては、骨折に繋がりやすく、擦り傷・打撲では済みません。
そして、特に冬の時期に増えるヒートショックです。
冬に急増するヒートショック
ヒートショックは、夏よりも冬に急増します。それは、温度が影響しているから。
夏場には、浴室も脱衣場も、ほぼ同じような温度になっているでしょう。
それが冬の脱衣場は、10℃程度、浴室内はもう少し温かく、湯船に浸かれば40℃。
そして、お湯から上がり、脱衣場に行けば、また10℃。
この温度の変化=温度差が、血圧を急上昇・急降下させます。
特に、浴槽から上がり脱衣場で服を着ている時、血圧の変化により、心臓疾患や脳血管疾患を起こしやすくなります。
リスクを減らせる入浴の流れ
- STEP.1温度設定
- 脱衣場・浴室の室温は22度~26度
- お風呂の温度は38度~40度
※湯を張った湯船の蓋を開けておくだけでも、若干温まります。一番風呂でなければ、前の方の影響で温まっていますね。
- STEP.2入浴前入浴前にも、コップ1杯のお水。
食事の直後・飲酒後は避ける
- STEP.3入浴中湯船に浸かる時間は10~15分程度
転倒に注意し、必要な福祉用具を準備しましょう。
立ちくらみも起こしやすいので、ゆっくりと立ち上がる。長すぎる場合、家族に声をかけてもらうよう頼んでおくことが良いです。
- STEP.4入浴後ふらつき転倒の防止に、着替えは椅子などに座って行います。
脱衣所に暖房器具を設置しておくと温度差が縮まります。
入浴後、コップ1杯の水を忘れずに。
浴室事故を減らす環境整備
滑り止めマット
サイズは、おおよそ3種類。浴槽内に沈めておくだけで、湯船から出る際に滑っての転倒を防止できるアイテム
サイズを変えて、浴槽中と浴槽から出た際に足を付く洗い場側にも小さいものが1枚あるとさらに予防できますね。
シャワーチェアー
一般的な風呂椅子では、高さが20cm程度であり、高齢者が立ち上がる際には負担が強くかかります。
高さ変更が可能なシャワーチェアーであれば、40センチと一般の椅子ほどの高さまで上げることもでき、立ち座りの際にふらついての転倒も予防できます。
椅子の足にも滑り止めのゴムもついているため、椅子そのものがずれてしまうことも予防できます。
手すりの工事
浴室内の移動や、洗い場で椅子からの立ち上がり用、浴槽でのまたぎの際につかまる場所があると安定します。
介護認定を受けている場合、購入や工事に補助が受けられる場合があります。
時間に余裕があれば簡単にでも、手すり工事や介護認定の仕組みに触れるのも良いですね。
詳細は、こちらの記事をご覧ください。
【はじめての在宅介護】介護保険の認定を受けるための申請方法と注意点 【はじめての在宅介護】高齢者宅の住宅改修は介護保険の対象になる?入浴講座のまとめ
それまでは元気に過ごしていたにもかかわらず、1度の転倒で骨折してしまったり、脳梗塞を発症してしまったり、今後の生活を大きく変えてしまう恐れがあります。
それでも同時に十分なメリットもたくさんある入浴。
入浴の注意事項や、環境整備を行い、入浴事故を予防しましょう。
トイレでも起こる危険があります。トイレに行くときは上着を羽織ったり、小型の暖房器具があると良い。
なんて事も伝えていくと良いですね。