緊急な調整となる場面も多く、状況に応じて臨機応変な対応が求められる短期入所(ショートステイ)。
事前に情報を整理しておくことで、急な施設探しにも慌てずに調整ができます。
依頼が来る場面を、大きく分けると
- 定期利用
- 単発(スポット)利用
- 緊急利用
こんな形で分かれると思います。
主に軽度者を担当する地域包括支援センターでも、普段関わる機会は少ないものの、緊急の手配となる場面は十分考えられます。
どのようなポイントに注意して事業所に繋いでいくと良いのかをまとめてみました。
- 新人ケアマネージャーさん
- 過去に短期入所の調整が上手くいかず困った人
バリバリのベテランケアマネージャさんには、不要な基本的なサービス調整の記事になります。
目次(もくじ)
事前の情報整理
他のサービス調整よりも、事前に集めておく情報量で、サービス調整の難易度が変化します。この部分が整理されていると緊急利用でも十分対応できると思いますよ。
居室の状況
- ユニット型
- 従来個室
- 多床室
金銭的に余裕のない場合は、必然的に多床室しか狙えないことや、認知症が進んでいる場合、従来型だと不安といった場面も想定されます。
その短期入所施設がどのような部屋になっているのかは事前に把握しておく必要があります。
認知症患者の増加に伴い、認知症棟などを設けて、一般の利用者と分けて入居させている施設もあります。混合となっている場合には、認知症の症状による対応程度のレベルを聞いておくと良いかもしれません。
申し込みの時期・空き状況
2ヶ月前から予約可能、3ヶ月前から予約可能など、施設により予約の開始時期は異なります。事業所ごとに何ヶ月前からの受付を行っているのかを確認しましょう。
定期利用を行っている利用者や、早い時期から旅行等のため依頼を受けている場合には、この申し込み時期開始直後に相談が始められるよう、予定管理は大切です。
お盆やゴールデンウィークなどの連休時期は、ショートステイが混みあいます。予約の時期が遅れると、埋まってしまうこともあるので注意が必要。
通常時の混雑状況についても把握しておくと、緊急調整となった際に、あちこち電話をせず進めていけることになります。
『今月の予約状況』などとファックスで案内をくれる事業所なども増えてきています。そういった情報を適切に管理しておくと、役に立ちます。
持ち物リスト
入所時に持参する持ち物は、基本的には
- 衣類(3日分程度あれば、あとは洗濯)
- タオル類(バスタオル・浴用タオル)
- 生活用品(歯ブラシ、髭剃り等)
- 介護用品(オムツ等)
- 薬(内服、湿布、塗り薬)
などですが、細かな部分ではタオルやティッシュボックス等は施設の物を利用するから不要とする施設もあります。
大半の施設は、持ち物リストを作成しています。
家族に準備が必要な内容を伝えるにあたり、ケアマネ側も各施設ごとの持ち物リストを事前に貰っておくと便利です。
薬の持ち込みは、必須ですが、準備が異なります。袋ごと渡す施設もあれば、自身で小袋に1包化し、名前を書いて日数分提出などですね。
衣類等も含めて、名前書きには時間も掛かりますから、早めに必要な物は家族に伝えたいところです。
送迎について
訪問介護や通所介護などと異なり、短期入所事業所は比較的広い範囲を対象としているので、送迎範囲にこだわる必要はあまりありません。
必要なことは、土日や通常営業時間外の送迎にも対応できるかどうかを知っておきたいところ。
緊急時などには、家族送迎や、自治体や地域包括が送迎せざるをえない場面もあるため、事前に施設側がどこまで対応できるかを知っておく必要もあります。
料金・加算
居住費・食費は、施設により金額が分かれ料金負担も実費となるので、知っておくと相談を受けてその場で概算の料金を伝えられます。
通常の『食費・居住費・介護サービス費』以外に雑費として徴収しているものがあれば金額と内容の確認。
入居中に理美容が利用できる等、自費による付加サービスを提供している施設であれば、それも兼ねて利用がしたいと言ったニーズに対応できます。
特に老人保健施設等での療養介護の場合には、加算の種類も金額も大きく変わってきます。
食事の対応
上記の加算で療養食などを取っている場合には、逆に安心できる部分です。
食事形態や療養食・制限食にどこまで対応できるかは確認しておく必要がありますね。
医療処置が必要な場合の受け入れ
インスリン・胃ろう・在宅酸素など、短期入所であってもその間の医療処置・管理が必要となることもあります。
療養介護を行う施設での受け入れ範囲は広いですが、生活介護としても情報があると便利です。
在宅酸素などを利用している方が長く利用する際には、酸素業者とも連携し、入居中にボンベの交換などを行えるように調整をしていく場面もでてきます。
基本的な調整の流れと注意点
※スタートからいきなり、ショートステイ調整といった場面は少ないでしょうから、ADLや医療情報等のアセスメントは既に済んでいる前提で記載しています。
- 調整手順1短期入所の相談場面確認するポイント
- 日程
- 部屋(個室・多床室)
- 送迎有無
- 目的(介護か療養)
- 本人の意向
- 負担限度額認定の状況
ショートステイの調整の際に、確実に間違えたらいけないのは、『利用する日程』です。これ間違えると予約も取れません。送迎の有無だけでなく、家族送迎する場合には、到着時間についても確認しておきましょう。
部屋の種類と、介護か療養かの意向が決まってくると、概算の料金を出すことができますね。利用期間が長いと、予想外に高額にもなるので、概算は先に伝えておくべきです。
※全体に介護保険が適応になると思っている方は多くいます。食費・居住費等には掛からないことを良く説明してください。
ショートステイでは、本人の意向が後回しとなり、サービス調整に移りがちなものです。
入居後の生活のためにも利用中の活動内容に対してどんなことがしたいか、どのように過ごしたいかといった希望を聞いておくことは大切。できる限り叶えられる施設選定が望ましいです。
入居費用を軽減できる制度として、負担限度額認定があります。該当する程度の収入か、または以前に受けたものが期限切れでないかを確認。
減免申請はケアマネがやる?通帳のコピーや、資産の申告もあるため、原則本人・家族に行ってもらう方が良いでしょう。
制度説明と、申請の打診までにとどめます。
- 調整手順2事業所の選定事業所連絡のポイント
- 空き状況の確認
- 契約、担当者会議の調整
- 持ち物リストを事前に貰う
希望日程、内容に対応できる事業所を選定します。
対応できる事業所が見つかれば、依頼書等のやり取りを済ませるとともに、担当者会議の日程調整を行います。
当日の契約・担当者会議の際に、持ち物リストを本人たちに提示されることが通常ですが、準備や名前書きには時間が掛かります。利用までの期間が短い場合、早めにリストを手に入れ、事前に渡しておけるとスムーズです。
- 調整手順3サービス担当者会議会議で確認するポイント
- 利用期間
- 送迎時間
- 持ち物の確認
- 緊急時の対応、連絡先
利用期間・送迎時間に、当初の依頼と間違いがないよう確認は必要。
契約の中で持ち物等が提示されると思いますが、上記に記載したように、事前に渡しておけると良いでしょう。
緊急連絡先の共有は必須事項です。
まれに、海外に行くために利用する家族がいます。普段の家族の連絡先がつながらない場合もあるので、改めて入居中の連絡先として確認が必要ですね。
- 調整手順4実施デイサービスなどと違い、入居中に様子を見に行くなどはしなくて良いと思います。
- 調整手順5サービス導入後確認するポイント
- ショートステイの感想
- 同じ施設への利用意向
定期モニタリング時の確認ですね。
入居中の不満も色々でると思います。仕方ない範囲なのか、事業所側の落ち度なのかを見極めましょう。
定期かスポットかの利用スタイルにもよりますが、再度ショートステイとなった時に、同様の施設で良いのか、別の場所を希望するのかを、感想を聞きがてら触れてみましょう。
『希望日程から、事業所調整して、サービス導入』この辺が、ショートステイ導入の基本的な流れです。調整そのものは至ってシンプルなので、本人に嫌な思いをされない事業所選定が行えるよう事前の情報収集が大切です。
暇になりがちなショートステイの調整ポイント
デイサービスなど違い、ショートステイを好んで利用する人はあまりいません。楽しませることよりも、安全を確保する意味合いの方が強いサービスですからね。
初めてのショートステイ利用や、施設入居前の練習としてショートステイを利用する場合、施設に対する悪い印象を持ったばかりに、『二度と行かない!』と言われてしまうことも多いです。
短期から始める
いきなり、1週間以上の長期利用ではなく、初回は1泊・2泊程度に短期の利用から慣らしていきます。
ショートステイ事業所でも、ボランティアの方が来ていたりイベント開催を定期的に行っている施設もあります。利用中も楽しめる演出のある際に利用を合わせてみるのも良いと思います
利用中の活動内容を確認しておく
定期でイベント等を開催している施設や、日中に活動を行っている施設もあります。ただテレビを見ているだけといった生活以外に取り組める活動があるのかを知っておくことも大切。
老健などで、リハビリを目的にした入所であれば、リハビリができれば目的としてはクリアとなりますが、ショート中のリハビリ時間はとても短いです。
回復期の病院で1日を通してリハビリを受けていたイメージで入所してしまうと、トラブルの元。事前に内容や時間の説明は、念入りにしておくべきですね。
居室が好きか、フリースペースが好きか
用が無い時には、居室内にいるだけ。と部屋に閉じ込められてしまう施設と、フリースペースで新聞を読んだりテレビを見たり、談笑したり、自由に動ける施設にわかれますね。
1人で静かに過ごしたいのか、大勢の中で過ごしたいのか、好みの分かれるところです。
入居日・退去日のスケジュール確認
入れ替わり際は、1部屋で2人の利用者を算定できます。
同じ日に、出る人(A)と・入る人(B)がいた場合、一つの部屋は、午前中まではAさん午後はBさんなどと分かれてしまうことがあります。
もちろん1人部屋を2人では使えませんので、午前中に到着しても、Bさんはフリースペースなどで待機、逆にAさんは午後に帰る場合、昼食後はフリースペースで帰りの時間までは待機などとなります。
通常のホテル・旅館と違い、チェックイン・アウトの時間が決まっているわけでないので、このようなことが起きるわけですね。
『泊っているのに、自分の部屋が無い時間がある。』って良い思いはしませんよね?
混雑状況には、このような場面も起きることもあります。
すべての施設で、このシステムを行っているわけでなく、同日の入退所がいても、部屋が重ならないように管理していることが大半。
ですが、このやり方をしている施設もある以上、スケジュールを確認をしておくことも必要です。
併設施設の検討
もともと通っていたデイサービス等に併設した事業所から探すことも一つの案です。
利用者やスタッフの顔ぶれがもちろん変わってしまいますが、同じ建物・同じ名前の施設であれば、全く知らない施設に入るよりも精神的なハードルは下がります。
気に入っているデイサービスであれば、より好印象ですよね。
ショートステイ調整ポイントまとめ
ご本人が積極的な利用希望よりも、家族の負担軽減を目的とすることが多いこのサービス。ショートステイを適宜利用できると、家族の負担は大きく軽減されます。
予定があっての入所か、緊急時の入所かで手順はことなりますが、必要な情報を整理しておけば、依頼に応じて対応することができます。
やっとの思いでショートステイに漕ぎ着けた家族にとって、その1回の利用がショートステイ嫌いを悪化させる結果にならないように、できれば利用中も穏やかに過ごせる施設を選びたいですよね。
今後の利用や、その先の施設入所まで抵抗なく繋げていけるように事前の情報収集は大切です。