自己覚知という言葉を知っていますか?
社会福祉士などのソーシャルワーク実践において、良く聞かれる言葉ですが、ケアマネージャーをはじめ介護職であっても、対人援助を行う上では大切な考え方です。
自己覚知とは何か、それが足りないことでどんな失敗が待っているのかなど、自己覚知が大切とされる理由をまとめました。
目次(もくじ)
自己覚知とは何のこと?
自己覚知=己を知る
自己覚知とは、明確に定義されているわけではありませんが、言葉の通り『自分(己)を知ること』といった意味合いです。
自分がどのような性格で、どのような感覚を持っている人間であるかを客観的に見極めるということ。
- 自分が几帳面な性格である。
- 自分がおおざっぱな性格である。
このような自分の性格について客観的に捉えていきます。
また性格だけでなく、行動パターン、考え方、感情の揺らぎなどについても理解しておくことが必要。
- こういった時に、落ち込みやすい。
- こんな行動は、許せない。
- こんな相手は、好き・嫌い
自分自身を全く特徴のない普通の人間だと感じていても、好き・嫌いといった好みや、生育歴により形成された価値観は人それぞれですよね。
自己覚知は、自分の人生を見つめ直して、自身の価値観を振り返ることとも言えます。
相手にも相手の価値観があることを知る
自分自身の価値観を知るだけでなく、それと同時に『相手にも相手の価値観がある』ということを知ることが大切。
この視点がケアマネージャーや介護職などを、対人援助を行う職種の方には必要になると言われています。
自分のしていること・感じていることすべてが、正しい行い・正しい判断というわけではありません。
あなたが几帳面であっても、周囲の人すべてが几帳面というわけではありません。自分が几帳面だから、周りも几帳面であるべきだと、思うことも間違い。
こういった視点が抜けてしまうと、高齢者支援をしていく中で自身の価値観を押し付ける形の援助になってしまい、円滑な支援が乱れ、ご本人の不満も溜まっていきます。
ケアマネ業務場面で想定されるトラブル事例
この『自己覚知』が至らない場合、ケアマネージャーとしては働くうえで、起こりうるトラブルたちは、こんなもの。
ケアプラン作成場面
- お風呂の回数
- 食事内容栄養
- 運動量
良くなるため、良い環境にするためには『こうするべき』という自分の価値観の押し付けになっているケアプランを作ってはいませんか?
ヤル気のあるケアマネージャーにありがちなやつです。
ケアプラン作成の根幹は『利用者本位』
ケアマネージャーは、方針を「決定する」のではなく「提案する」に留めるべきです。その提案に乗らないのであれば、それ以外の方法を提案。
判断力にも影響するので、一概には言えませんが、意思決定ができる(決定者がいる)うちは『提案』です。
自分が良いと思うことを押し付けるケアプランでは、利用者本位にはなりませんし、そんなプランでは本人には不満が募るばかり。
他事業所の活動内容
【場面】デイサービスに利用者の様子を見に行ったら、窓際で座って外を眺めていた。
本人に不満そうな様子はなく、職員も「この時間は、あんな風に穏やかに過ごしているのが良いようです」と言っている。
- 集団の中に入れてあげるべき!
- 何か活動をさせるべき!
などと職員に突っかかってはいませんか?
せっかく、デイサービスに行っているのだから『何もしない時間』はやめて欲しい!と直球で判断するのは、ケアマネ自身の考えに寄っている気がします。
活動を好むか、ゆとりある生活を好むかは、それぞれの意向に分かれ、デイサービスの利用方法もさまざまです。
- 本人は、ゆっくり活動したい。
- 家族は、活動機会を多く持って欲しい。
こんな意向の違いが出てしまうとケアマネージャーの悩むところにはなりますが、基本的には本人意向に沿える配慮ができると良いと思います。
お願いしたいときに
ケアマネージャーの業務では、あちこちに『お願い(相談)』をして、成り立つ部分が多いです。
そもそも「聞いてみる・頼んでみる」を諦めてしまっているなんてことはありませんか?
- これを頼むのは申し訳ない(忍びない)
- これは、頼んでも無理だろう
こんな風に、ケアマネージャーの判断で『お願い(相談)』を無理な物だと決めつけて諦めてしまうと、そこで支援が止まってしまいます。
話だけでもしてみると、意外とスムーズに進むことも多いです。
助言を受ける際に
さすがにこれは、包括に苦情が来るような内容では無いのですが・・・職場内での場面ですね。
どうでしょう、上司・先輩からの助言に対して、素直な心で接してますか?
素直と言っても、助言に対して100%従うと言うのも間違いです。それでも一度は『受け止める』といった心構えが大切。
言われたことは全て従うの間違いですが、全く聞かないのも違います。行動を起こす前に、言われたことと自分の行いを照らし合わせ、答えを出していく過程があると良いですよね。
まとめ
自己覚知を高めるためには、自分の好き嫌いなどの価値観や人間性といった部分を客観的に見て知ることが、スタートライン。
一朝一夕で完成するわけでもなく、またどこかのタイミングで完成するわけでもなく、日々身に着けていく終わりのない物だと思います。
自分と相手、それぞれの価値観に目を向けて日々の活躍ができるようになれば良いですね。