その地域に合った、地域ケアシステムの構築のプロセスとして、
地域ケア会議の開催が盛んに行われています。
地域包括支援センターで働いている方は、行政側からの開催ノルマやケース選定に、頭を抱えたりはしていませんか?
地域ケア会議にも分類があり、会議ごとに役割があります。
橋を作る事を知り、目的に向かってレンガを積むのと、依頼されただけで、訳もわからずレンガを積むのと、出来栄えに差が出るという事は良く使われる例えがありますね。
あなたのレンガ(地域ケア会議)は、何に向かって積まれているのでしょうか?
会議の呼び名は、自治体によりさまざま変わりますが、中身は大きく変わりません。
ケア会議の種類、その意義について整理してみました。
そして、多く耳にする地域ケア会議と担当者会議の違いについても合わせて記載させていただきました。
目次(もくじ)
地域ケア会議の種類
おそらく、皆さんの地域もこの3種類程度に分類されているのではないでしょうか?
個別ケース会議
個々の事例に焦点を当て、地域課題抽出に繋げる会議です。
地域ケア会議の開始当初は、
主に、現在の制度・資源を活用しても、解決できない・進められないという複雑なケース(困難事例)を会議テーマとして検討をすることで、その地域に足りない制度や資源を抽出していくことを目的とした開催です。
日常的に支援する、ケアマネ・サービス事業者だけでなく、地域の力や専門職に参加を呼びかけ、多角的に検討するための会議ですね。
こういったテーマ選定での地域ケア会議は、現在でも行われています。
それに加え、最近の流行りとも言えるのでしょうか、
『自立支援型 地域ケア会議』という呼び名が付く会議が最近推奨される傾向にあり、
これも、この個別ケース会議に該当します。
『自立支援型 地域ケア会議』では、現在介護サービス等に頼って生活している方に対して、
どの部分が改善されれば、介護サービス利用からの卒業が狙えるのかであったり、
現状維持が目的のプランから、状態改善のプランへの切り替えの視点を狙うものが当たります。
その改善課題が、個人の能力を高める必要なのか、環境の整備なのか、地域の課題なのか
そういった場所を整理し、地域課題を抽出していく方法です。
どちらも、ご本人の生活課題の解決のために実施するものですが、
解決に結びつかない場合や、地域で同様ケースの課題が多い場合、地域の課題として提言していきます。
関係者間のネットワーク形成もケア会議としての機能の1つと言われています。
個々のケース対応を通して、お互いの関係性の向上や、会議を通して知る事のできた資源や制度の活用により、幅広いネットワーク形成といった、今後の支援に繋がる連携作りの機能です。
地域レベルの地域ケア会議
個別ケースを集約し、その地域課題に目を向ける、広い地域レベルでの会議
開催頻度は、個別ケースの地域ケア会議よりも少ないです。
個別ケースから、多く挙がった検討テーマを整理し、
それを地域の課題として検討。
⇒相談先がわからない?
1人暮らしで支援が届かない?
⇒地域に認知症の理解を深める活動が必要?
⇒相談窓口(地域包括)の周知がされていない?
⇒今の、資源・制度で補えるものか?
⇒さらに先の将来は?
⇒収集所のまでに障害(坂・段差)が多いのか
⇒収集方法が複雑なのか
⇒ゴミ出しのボランティアは必要?
⇒市の戸別収集は必要?
などなど、
地域の力で解決できる問題なのか、市レベルで事業・政策として進めるべきものかを検討。
市全体規模での地域ケア会議
高齢者の住みよい街づくりに向けての、市全体の課題として、政策に繋げる市全体レベルでの会議
複数の地域で行われた地域課題を集約し、現在の市の課題として、検討します。
地域の需要・ニーズに合ったサービス基盤の整備
政策・事業化や、県・国への提言などへ反映していくための会議。
担当者会議と個別地域ケア会議の違い
地域包括職員からは、地域ケア会議と担当者会議って何が違うのか?と言う声を良く耳にします。
参加者として呼ばれることの多いサービス事業所の方も多く悩まれている印象です。
個別ケースの地域ケア会議は、会議の規模も小さく、参加者も日常的に利用しているサービス事業者関係が多いケースもあるため、そのように思うこともわかります。
私のイメージにもなりますが、
充実した担当者会議と、中身の薄い地域ケア会議は、同じようなもの
だと感じています。
担当者会議と地域ケア会議の違いは最終目的
一番の違いは、会議の目指す最終目的にあります。
担当者会議は、ご利用者がサービス利用をするにあたり、ご本人の身体・生活状況の共有や、目標の確認、介護サービスが正しく実施されるための共通理解が主に行います。
利用者の適切な介護サービスの利用により、身体・生活状況の改善を狙うわけですね。
一方、地域ケア会議、ここでは混同しやすい、『個別ケースの地域ケア会議』を指しますが、こちらも、ご本人の身体・生活状況の改善を狙うためもに行います。
そのため、参加者として呼ばれるサービス事業所の方などは同様なものと捉えやすいところではありますが、地域ケア会議の最終目標は、個別ケースの課題から、地域の課題を抽出し、地域の発展につなげること。
それに加えて、担当者会議よりも幅広い関係者を収集することによる、ネットワークの形成にあります。
そのため、担当者会議にも幅広い関係者を呼び、ご本人のサービス利用のためだけでなく、地域そのものの課題・欠点について考えが広げられるような、充実した担当者会議と、
地域ケア会議と言いながらも、ご本人の生活改善だけに目が向いてしまい、地域づくりに活かせないような、中身の薄い地域ケア会議は、似たようなものになってしまうのです。
混同の要因は、会議の進行場面も影響している?
内容だけでなく、混同しやすい要因は、会議の開催スタイルも影響しているように感じます。
それは、地域包括職員が、その対象者の担当ケアマネを行っているからではないでしょうか?
そして、担当ケアマネだからと、開催の際に司会進行を担っていませんか?
地域ケア会議の進行・運営は、市や地域包括支援センターが主に行います。
本来、担当ケアマネは、参加者の1人。
幅広い意見を、多角的な視点・専門的な視点から検討する会議であるため、
会議の進行と、対象者の主担当は別の職員が担った方が良いと思います。
地域包括の主催であっても、進行は別の職員が行い、
担当者は参加者として実施することで、見えてくるものもあると思います。
担当ケアマネとサービス事業所間でのサービス利用のための情報共有ではなく、
対象者の方の、課題解決に向けて、普段サービスに関わっていない専門職や、外部の視点を入れることで、見えてくる課題抽出・整理が、地域ケア会議と担当者会議の違いです。
まとめ
実際に、個別の地域ケア会議のテーマから、市の政策まで結びついたケースは見てきましたが、
当初の個別ケースから、政策実施までの期間がとても長かったです。
これを繰り返し行っていくことで、
徐々に住みよい街づくり=地域ケアシステムにしていくんでしょうね。
開催ノルマに追われて、会議を行っている地域包括の方がいましたら、
自分たちの地域に欲しい、あったら便利な、資源・事業・政策を得るために
逆算して、テーマ選定してみるのも良いかもしれません。